バンとバンバンの備忘録

いつの間にかCB750の備忘録

⚠️ 教習車(CB750L)について

【記事最終更新 2021.05.09】

 

 

CB750の教習車と市販車との違いをあらためて備忘録に残しておこうかと。というか、自分なりに過去に得た情報のまとめ。場合によって裏取りはパーツリストから。

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過去には最終型まで記載されている5版を持っていたが、残念ながら今は手元に無いのでバイク屋さんで3版を見せてもらってる。

 

 

初代教習車が発売されたのは1996年1月。エンジっぽいカラーの市販車二代目CB750FⅡTが出たあとで、名称はCB750LT (RC42-115xxxx)。ボディカラーはスターリングシルバーメタリック。

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何故か初期型のパンフレットまで持っている。

 

市販車との主な違いは以下。

・油圧クラッチ

・大型オイルクーラー

・リア片押し2Podキャリパー

・アップハンドル&ステップ

・ローシート

・ブラックマフラー

・ブラックメーターカバー

・ポジション付きヘッドライト(50/40W)

・ライトステー

・角形ウィンカー

・丸型ミラー

・グラブバーレス

 

その他、大型ガードやシフトポジション等を示すランプ類の教習用装備が付属する。これらの専用装備取付けの為、フレームはダウンチューブやシートレールの細部が変更されている。

 

外観は、タンクのエンブレムがFⅡT同様にアルファベットでHONDA。リアサスはリザーバータンク無しでスプリングはメッキ仕様。メーターはカバーが黒くなるだけでなく、メーター下のインジケーターランプの配列が違っている(ウィンカーが左右独立している)。

 

エンジンは圧縮比が8.8と市販車より低く、最高出力73PS/最大トルク6.3kgmというアンダースペックとなっている。キャブのメインジェットは市販車と同じで外側が#110、内側は#112。余談になるが、同じエンジンでもナイトホーク750は4発とも#110だった。

 

オイルクーラーは市販車より1段多い7段コアで幅も広く大容量。初代のパンフレットには8段オイルクーラーとの記載があるが実際には7段。尚、初代の電動ファンはオプション設定で、パーツリスト3版では最終頁に別途記載されている。発売当初からオプション設定されていたかどうかは不明。

 

油圧クラッチの採用はワイヤー調整等の日常的なメンテナンスを無くすことが目的。同じエンジンのCBX750Fは油圧クラッチだったこともあり、コストをかけずにメンテナンスフリー化を実現している。また、この初期型ではミッションやスプロケットの変更はなく減速比は市販車と変わらない。

 

 

二代目はCB750LW (RC42-120xxxx)。外観上はオイルクーラーのみ変更。しかし、ここから実用面での大幅な仕様変更がある。他のモデルは市販車の仕様変更に追随して発売されているが、このLWだけは妙なタイミングで登場している。オーバーヒートや低速走行教習などで初代(LT)が現場から不評だったことが伺える。

 

オイルクーラーは更に1段多い8段になり、オイルホース取付けがコア上部になって市販車とは異なる形状に変更される。電動ファンも標準装備。更に、最大の変更点は減速比。リアスプロケットが39Tから43Tになり2次減速比が大きくなるが、それだけでなくミッションのギア比もより教習用に特化した設定となる。

 

[ 変速比 (市販車 → 教習車) ]

1速 3.000 (14T/42T) → 3.000 (14T/42T)

2速 2.055 (18T/37T) → 2.235 (17T/38T)

3速 1.545 (22T/34T) → 1.269 (26T/33T)

4速 1.240 (25T/31T) → 1.035 (28T/29T)

5速 1.074 (27T/29T) → 0.964 (28T/27T)

 

例によってパーツリストから拾った歯車の歯数から算出した変速比。これはあくまでミッションだけで比べた結果。リアスプロケの変更でファイナルも変わるので、1次〜ミッション〜2次のトータルでの減速比は以下のようになる。

 

[ トータル減速比 (市販車 → 教習車) ]

1速 13.887 → 15.312

2速 9.515 → 11.409

3速 7.154 → 6.478

4速 5.740 → 5.286

5速 4.972 → 4.921

 

これは単純にエンジン回転数とリアタイヤ回転数の関係を表す数値になる (例えば15.312の場合、クランクシャフトが15.312回転するとリアタイヤが1回転する)。前回の『スプロケットと速度』でも述べた通り、6速ミッションの3速が抜けてるような繋がりになっている。言い方を変えると、2速を使える幅が広い設定。

 

【追記】

友人に貸していた初代(LT)の整備要領書が戻ってきたら、過去に自分で書いたメモが見つかった。

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これは以前ヤフオクに出品されていた教習車用サービス資料(整備要領書)の画像から書き写したもの。つまりL4以降のどこかでもう一回ミッションのギア比が見直されている。最終的な変速比はメモ書きの通りで間違いない。

 

 

三代目はCB750L1 (RC42-130xxxx)。外観上はタンクのエンブレムがウィングマークに変更されるが、その他の仕様変更はほとんどない。

 

 

四代目からカラーリングが赤白になり、以降L4、L5、L7が発売されている。ミッションの変速比以外はほとんど仕様変更は無いと記憶しているが、今となっては裏が取れないので詳細は割愛。

四代目 CB750L4 (RC42-140xxxx)

五代目 CB750L5 (RC42-155xxxx)

六代目 CB750L7 (RC42-165xxxx , 166xxxx)

 

市販車はF4からイモビライザー付きの後期型となるが、教習車には当然そんなものは付いていないので前期も後期もない。強いて言えば、シルバーが前期でL4以降の赤白が後期ということになるのか? 尚、最終型L7の車体番号が2種類あるのは生産拠点の違いと思われる(未確認情報)。2008年に浜松製作所での二輪車生産が終了して熊本製作所に移管されているので、165xxxxまでは静岡産、166xxxxは熊本産ではないかと推測できる。

 

 

◆ 市販車へのパーツ流用

現実的に流用できるのは(あるいは流用するメリットがあるのは)、オイルクーラーとリアキャリパーくらいか。見た目で黒いマフラーにするのもいいが、なんせ教習車なのでまともな状態の中古はまず無いと思った方がいい。

 

[ オイルクーラーの流用 ]

初期型のオイルクーラーは市販車より幅が広くて1段多い7段。幅広なのでホース取付部も左右に離れるが、1段分位置が低くなるのでホースは市販車と共通(部品番号が同じ)。オイルクーラー自体の取付け方は同じなので入手できれば無加工で流用できる。実際に使ってみたことがあるが、夏場は良いが冬場はオーバークール気味。高速巡航中だと60℃を下回ることもあった。交換は簡単なので、ノーマルの6段と両方持っていれば夏冬使い分けるのがいいかもしれない。8段のものは取付け部も異なるのでポン付けは不可。

電動ファンに関してはジェネレーターの容量が変更されているかどうか不明なので、後付けする際は必要な時だけ使用できるようON-OFFスイッチを追加した方が無難かもしれない。

 

[ リア2Podキャリパーの流用 ]

市販車へ流用する場合はキャリパーサポートとブレーキホースも必要となる。バンジョーボルトの位置と向きが変わるので、市販車用のホースではバンジョーの角度が合わず取付けできない。これも使ったことあるが、効きが良いというよりはコントロールしやすい印象だった(個人の感想です)。ただ、メンテナンス性が悪いので結局ノーマルの1Podに戻した。

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パッと見は右フロントキャリパーと同形状だがキャリパーを起こす向きが違う(黄色矢印のボルトを外して赤矢印を支点に起こす構造になっている)。当然ホースが邪魔でキャリパーが起こせないし、ホースを切り離して起こしたところでパッドはうまくハメられない。つまりパッド交換はキャリパーを固定した状態でパッドピンだけ抜いて行うことになる。これがまた作業がやりにくい。結局のところピストンやシールの状態まで見たければ、オーバーホール前提でリアホイールを外すことになる。

 

[ その他の流用可能パーツ ]

アップハンドルは好みの問題で使用可能だが、カタログ数値での全高は5mmしか変わらない。スイッチ類の部品番号は当然違うが、パーツリストでは配線の長さの違いまでは分からない。その程度のアップ具合ならノーマルのままでも配線は届くのではないかと。

 

この他ライディングポジションに関しては、ローシートを採用しているが純正オプションのそれとは部品番号が異なる。具体的な違いは不明だが、流用するより自分のシートをアンコ抜きした方が手っ取り早いかもしれない。

 

ステップは踝辺りのガードが社外バックステップっぽいデザインになっているが、ポジション的には低く前寄り。ガード部分を含むベースプレートやステップは鉄製なので、デザイン以外に流用するメリットはあまり無い。シフトペダルは部品構成の違いから市販車と部品番号が違う。断言は出来ないがペダル自体が短い可能性あり。ただ、ブレーキペダルは市販車と同一なのであくまでも可能性としての話。

 

 

◆ 中古車を購入する際の注意

ヤフオク等で出品されていたり、一部の教習車を扱う中古車店で手に入れることは可能。登録書類が揃っていることが大前提ではあるが、車検を取れば(新規登録すれば)公道を走ることもできる。教習用ランプ類は外されるのでヘッドライトとメーターの間に大きな隙間ができてカッコ悪いが、これはライトステーの交換で対処可能。また、教習車は前後ブレーキが個々に点灯し、通常のテールランプはリアブレーキ専用の配線になっている。フロントブレーキでも点灯しないと車検には通らないが、その辺りも一応確認すること。個人的にはギア比が気になるので乗る気はしないが、ジムカーナや通勤スペシャルなどの限定的な使用状況においては適しているかもしれない。