バンとバンバンの備忘録

いつの間にかCB750の備忘録

⚠️ RC42のフルパワーとは

【記事最終更新 2021.04.08】

 

CB750(RC42)にお乗りならカナダ仕様のマフラーをご存知の方も多いかと思うが、この「カナダ仕様」を調べてみたくてフルパワーについて模索したことがある。この事を以前やってたYahoo!ブログに書いたことがあったのに、内容を保存したつもりが消えてしまった。だんだん記憶も薄れてきつつあるので思い出せる範囲で備忘録に残しておこうかと。なんせ物的証拠が残ってないので、RC42マニアの戯言として読み流していただければ幸いです。

 

 

【キッカケは輸出用パーツカタログ】

 

以前、輸出仕様のパーツカタログを見る機会があった。英語・仏語・独語、あと一つはスペイン語だったか? とにかく4カ国語の表記なので4冊分の厚みがあるカタログだった。国内用と同様に最初のほうにエンジン・フレーム・キャブレターの号機を記載した号機管理表があり、その次あたりの頁に「何馬力のモデルがありますよ」みたいな事が書かれていた。そこにはハッキリと『FULL POWER』の文字が。他にも何種類かの馬力数が記載されていたが、その数値の中に国内仕様と同じ75PSの表記は無かった。ちなみに北米向けの仕様はUS(これは不確かな記憶だが輸出地を表す記号)とだけ記されていて、カナダ仕様なるものは存在しない。しかも、残念ながらUSはフルパワーではなかった。マフラーの件は後述するが、カナダ仕様のマフラーなんて実は無かったのである。

 

フルパワーと記されていたのはドイツ仕様の一部車種。ドイツ仕様は当初3種類のパワーが用意されていた。これを大(フルパワー)・中・小とすると、ある年式から大・中と小の中間の2種類になった。年式によって異なるがドイツ仕様だけで4種類の馬力仕様が存在したことになる。おそらくは教習車的なものとか、或いは免許制度などの都合で何種類か用意されていたんだと想像する。一番アンダーパワーなのは、たしか27PSだった。他にもヨーロッパのもう1カ国(オランダあたりだったと思う)で2種類の馬力仕様があったような気がする。肝心のフルパワーが何馬力なのかはパーツカタログには記載が無かった。

 

 

【では、フルパワーの正体は?】

 

その当時は国内仕様のパーツカタログを3冊持っていた。ナイトホーク750と初期のCB750FⅡNからCB750F5までを記載した第8版、CB750F7以降新たに発行されて最終型のCB750F8も記載する第2版、さらに教習車の初期型CB750LTから最終型のCB750L7まで記載した第5版。この3冊で国内仕様全てを網羅する。そこで吸気系からエンジン本体、さらに排気系に至るまでパワー差に関わるパーツを輸出仕様と見比べてみた。もちろん部品番号ベースでの話ですが。

 

あくまでもパーツカタログ上で明確になったこと、それは吸気系でパワー制御されているということ。それもほぼインシュレーターの違いのみと言っていい。

f:id:chorin_pro:20200719130215j:image

(注 : 画像は国内仕様のパーツカタログです)

これはキャブレターとエンジンを繋ぐ部品で、何種類かある馬力仕様ごとに部品番号が違う。残念ながらどこがどう違うのかは判断できない。おそらく内径が違うか、半分塞がってたりする断面形状の違い。吸入混合気の量で出力を制御しているのは間違いない。キャブレターAssyでの品番も違うが、各々のショートパーツは部品番号が同じだったりする。キャブ本体の鋳型を数種類用意するとは考え難いのでこういう結論に至った。ついでに、エアークリーナーは国内外共通です。口が大きく空いたヤツは北米向け(だったと思う)のナイトホーク750初期に使われていたもの。

 

パワーに関係する可能性の一つに点火時期があるが、ブラックボックスの中身は部品番号の違いだけでは判断出来ない。しかもパワー差によって部品番号が違うという紐付けも出来なかった。極端にアンダーパワーな27PS仕様はレブリミッターでも設定されているのではないかと思われる。これは排ガス成分に直結することでもあるので、もしかしたら馬力云々より環境対策的な要素が強いのかもしれない。

【追記】点火時期を決めるのはパルスジェネレーターだ。今更気付いても遅いが、パルスローターは国内仕様だけでも年式によって2種類ある(FⅡTの途中から変更)。残念ながらコレは輸出仕様のカタログとの比較はしていない。ちなみに、同じエンジンのCBX750Fとはセンサーもローターも形状が変わっている。

f:id:chorin_pro:20200623193430j:image

 

肝心のマフラーは、フルパワーとそうでない仕様が同じ部品番号だったりする。つまり排気系は直接パワー差に影響していないことになる。おそらく各国の音量規制をクリアする為に数種類用意されていたと思われる。俗に言うカナダ仕様のマフラーは出口を加工して口径を大きくしているが、よく考えてみればマフラー内部の排気の流れは変わらないワケで、音は変わるがさほどパワーアップにはつながらないハズ。時々『トルクが太くなった』とかいう感想を見かけるけど、排気効率が良くなれば逆にトルクは細くなるんじゃないか? 音が良くなった分だけ無意識に以前と違うアクセルの開け方になっているのでしょう。(一応言っときますが、自分のCBも俗なカナダ仕様になってたりする。音はいいよ、音は。)

 

 

【結局、フルパワーって何馬力?】

 

フランス仕様のカタログを見たことがある。たしか73PSだったと記憶しているので、ドイツ仕様のフルパワーはこれより上ということになる。数値はわからないままだが、国内仕様の75PSとの差がどれくらいあるのかは気になる。しかし、この疑問に答えは無い。

 

日本車は日本工業規格(JIS)に乗っ取って測定される。これに対してドイツはDIN規格。JISとDINの測定環境を比べただけでも標準となる気温や気圧等が異なるようで、つまり違う条件での試験結果なので比べようがないのである。数値を換算する方法はあるのかもしれないが、それはあくまで机上の話。実際に同じ条件で測定しなければ意味がない。…と思う。

 

結局パーツカタログの比較から言えることは、ドイツ向けのフルパワーか日本国内仕様のどちらかが "RC42の" 本当のフルパワーだということに過ぎない。個人的には、実は国内仕様がフルパワーなんじゃないかと思ってたりする。

 

 

【結論】

 

ここまで書いたことは推測の域を出ない話ではあるが、『 "RC42の" フルパワー』と書いたところは大事なポイント。元々このエンジンを載せていたCBX750Fは国内仕様ですら9,000rpmで77PSを発揮していた。ピークを8,500rpmに設定しているRC42には余力が残っていることになる。これが壊れないエンジンと言われる所以なのかもしれない。フルパワーとは「このエンジンで何馬力出せるか」ではなく、あくまでも「この車種の中で一番高出力な仕様」ということだ。故に、フルパワーの正体を探ること自体『井の中の蛙』的な発想なのかもしれないとの結論に至った。だって、今時のバイクは同じ排気量でももっとパワーがあるんだから。(それを言っちゃ元も子もないが)

 

2008年8月に最終型が生産終了されてから12年が経った今、自分のCBに至っては車齢26歳になる。もはや珍しくなった空冷四発でどれだけパワーが出せるかより、どれだけ長く乗り続けられるかを考えた方が良いのかもしれない。今回あらためて考察してみて、そんな事をつくづく思った。